- ナノ -

ルナティック

※SSL
見てみろよ、空。聞こえた声に倣って空を見上げる。冬真っ只中の澄んだ空気と身体を芯から冷やすような夜風、吐いた息が白く消えていく様をぼんやりと見詰めながらも、何だよ、と。言うと同時に#名字2#の指差す方へと視線を上げた。

「月、欠けてるだろ?」

皆既月食なんだと、今日は。白い吐息と共に吐き出されたそれに再度空を見上げれば。また少し、月が欠けたように見えた。

「11年振りなんだと、見れて良かった」

心底嬉しそうに頬を緩める宮路の姿を横目に、あんたは月が好きなのか、と。小さく呟いた言葉に頷きが返される。月が綺麗ですね、シンと静まり返った夜道に響く#名字2#の声が妙な振動と共に俺の耳へと響いた。何故か、耳を覆いたくなるような、だけどその意味を知りたいような、訳の分からない感覚にとくとく、と心臓の鼓動が早くなる。

「黙るのは反則だぜ、龍之介」

電灯の明かりが陰ったと同時に唇には柔らかい感触。あまりにも急なそれに口元を手の甲で押さえながらも宮路の顔を見れば。隙あり、なんてな。ちらりと舌を覗かせて返された言葉にくらり、と頭の奥がぐらついたのが分かった。


ルナティック


(月に魅せられた)
(にやりと笑みを浮かべる宮路は至極楽しそうにそう言った)
‐End‐
20111211.