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安堵

※SSL
嫌な夢を見た、そう言って俺のベッドに入り込んできた総司を迎え入れる。どうした、と緩く頭を撫でれば瞳を閉じて首を小さく振って見せる。言いたくないのなら言わなくて良いけどな、と。額にかかった前髪を退け髪を櫛けば。不意に着ているシャツを引っ張られ、そしてぎゅう、と握り込まれた。

「……自分の部屋に戻れって言わないの?」

小さく問われたそれに思わず苦笑が溢れる。俺の側が落ち着くなら今晩はこっちで寝れば良い、枕元のライトを消して掛け布団を総司の肩口へと掛けて言えば。

「ありがと、四季君」

漸く見せた笑みに安堵の息。ふ、と頬を緩めて、良いから寝ろよ、と背中を一定のリズムで擦れば。ん、だなんて普段の姿からは想像しがたい幼げな声を最後に寝息が聞こえてきた。

「今度は良い夢、見れると良いな」

携帯の目覚ましを普段より十五分早めにセットして、そう呟く。どうせ総司のことだ、母さんが起こしにくるまで時間ぎりぎりに寝ているだろうと容易に明日の朝の情景が目に浮かんだ。この歳になって同じベッドで眠るというのもどうかと思うが、まあそれは一種のスキンシップとして片付けよう。一人そう納得して、傍らで眠る総司に倣って瞳を閉じた。


安堵


(ふに、と悪戯心につねった頬は昔と変わらず柔らかかった)
(図体ばっかりでかくなりやがって、眠りに落ちる間際そんな昔のことを思い出したある日の晩)
‐End‐
20110719.