- ナノ -

※SSL
「雨ってさ、アンニュイな気分にならねえ?」

窓の外でしきりに落ちる雨粒を一つ、二つ、三つと数えては止め、数えては止めを繰り返して問えば。俺の言葉を受け取った左之助はどうした、だなんてごく自然に俺の髪を撫でて見せた。

「アンニュイってのがどういったモンなのかは知らねえが、どうした、らしくねえんじゃねえか」

そう言って俺の顔を覗き込む左之助へと体重を預けるようにして体勢を変える。肩に頭を預けて左之助の背へと両手を回せば。とんとん、と一定のリズムで叩かれる背中に何故だか酷く、泣きたくなった。

「……わり」

小さく呟いて瞳を閉じれば、眼前に広がるのはひたすら真っ暗な空間。ただ耳に心地好く響く雨音と、鼻先を擽る左之助の香りとが今の俺の気持ちと凄まじいほどに対極で。甘やかされるままにその背を掻き抱いた。



(四季、気分はどうだ?)
(雨音を消した左之助の声に俺の意識は自然と落ちていった)
‐End‐
20110627.