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関係

※SSL
「ごめんね、総司。僕がネクタイを借りちゃったせいで一君に怒られちゃったって左之さんに聞いたから」

総司のにっこり笑顔を向けられて、ああこれは先に謝るべきだよなあって考えてそう頭を下げる。ちらりと視線を上げて総司の表情を伺えば。

「ふは、そんな顔されちゃうと怒れないじゃない。まあそもそも僕は四季と井吹君の様子が見たかっただけだしね」

僕の頭を軽く撫でて総司はそう悪戯げに笑みを浮かべて見せた。

「それで、井吹君。四季とは仲良くしてくれてるよね?」
「べ、別に普通にしているだけだ。あんたにそんなことを心配される筋合いは無いだろ」

総司の問いかけにどもりながらも答える井吹君とその光景を黙って見守る僕。確かに総司から聞いていたように、総司と井吹君は何かと物言いに刺があるような気もする。うーん、僕と話す限りは井吹君も普通なのに、不思議。

「関係無いだなんて、心外だなあ。四季は、僕の弟なのに」
「……は?」

そうこうしているうちにあっさりとタネ明かしをしちゃった総司。対する井吹君は瞬きを繰り返して、口はぱくぱくと言葉が出ない様子だった。

「……中等部、三年。沖田四季、部活はバスケ部所属。趣味は楽しいこと探し。今は井吹君に構うことが毎日の習慣になりつつあるかな、はい、他に聞きたいことは?」

まあ別に隠してるつもりはなかったけれど、と。以前同様にそう締めれば。

「な、だ……だってお前、そんなこと一度だって」
「うん、だから隠しているつもりは無かったんだよ。でも昨日、左之さんと僕が話している時も井吹君は聞いていたでしょ?」

僕言ったよね、総司の部屋に入った時に拝借しちゃった、って。そう言って今は総司の首元にあるネクタイを指差せば。僕の腕を引いて総司の隣へと立たせる井吹君。ちなみに僕は総司よりも少し身長が高かったり。ほら一応、バスケ部だしね。

「た、確かに……似てるか似てないかで言えば……似てる、な」
「うん、井吹君も言っていたでしょ。僕と総司は友達だから似ているな、って。まあ正しくは兄弟だから、なんだけどね」

はあ、と。僕の言葉を聞いた井吹君は髪をくしゃりと掻いて、小さく息を吐いた。でもその表情は怒っているとかじゃあなくて。してやられた、って。そんな苦笑混じりの表情だった。


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(やっぱり井吹君は鈍いよね、本当に)
(な、う……うるさいっ)
(総司、あんまり井吹君のこと苛めないでよ)
(ふうん、四季は僕より井吹君を選ぶんだ)
(……な)
(うん、僕井吹君のこと気に入ってるからね)
(へえ、良かったね井吹君でも気に入ってくれる人が居てくれて)
(ど、どういう意味だよっ)
(別にー)
‐End‐
20110619.