- ナノ -

真相は闇の中

※リバ注意
「ぜーったい俺は四季だと思う」
「……でもよ、平助。万が一っつうことも無いとは言えないぜ」
「確かに左之さんの言うとおりかもしれないね、四季も男だってことには変わりないし」
「まあ、確かにあいつはどっち着かずな顔付きしてやがるから平助の言いたいことも分かるがな」
「いやいやだって考えてもみろって。あの新八っつぁんが下だなんていくらなんでも恐ろしいって」
「……そりゃ、言えてるな」
「と言うか、普通に考えてみれば四季が下って考えた方が違和感は無いよね」

戌の刻を半刻程過ぎた頃、広間での酒盛りも中盤に差し掛かり誰からともなく以前から気になっていたことについて話し出した。
試衛館時代から共に過ごしてきた四季と永倉が恋仲となったと本人らの口から聞いたのはつい一月程前のことだった。正確に言えば今まで散々と惚れた、好きだと永倉へと伝えてきた四季に漸く永倉が折れたと言うべきだろう。互いに同性ということもあり端から見ればそれまでとなんら変わった様子は見られなかった故にそれについて数日前に沖田を始めとした四人が四季へとそれとなく聞けば、する事はしているとの答えが返ってきたのだ。


「まあ、二人も子供じゃ無いんだし」
「溜まりもするっつうこと、だよな」
「……て言うか、俺はどっちが女役なのかが気になるんだけど」
「……それは、なあ」
「……体格から言うのならば四季、と考えるのが妥当だろう」

普段こういった類の会話には参加しない斎藤も口を挟むあたり気にはなっていたのだろう。四人はそれぞれ首を傾げ今に至るのだった。酒の勢いもあり好き勝手に意見を交わしていれば不意に斎藤が腰を上げ広間の入口へと向かった。あとの三人が不思議そうに視線を向ければ。


「……気になるのならば、直接聞けば良い」
「は?」

三人の声とほぼ同時に引き戸を開けるとそこには徳利を持った四季の姿があった。何が何だか分からずといった様子で瞳を見開く藤堂と互いに気まずそうに顔を見合わせる沖田と原田に四季はくつくつと喉で笑うと斎藤と共に腰を下ろした。

「たまたまうちの組と新八んとこが巡察だったからって随分と面白そうな話してんじゃねえか」

盃の酒に口を付け言う四季は言葉とは逆に瞳を細めて至極楽しそうに薄く笑って見せたのだった。

「で、俺と新八はどっちが下か、だったか」

四人の顔を見渡すように聞くと躊躇いがちに頷かれたのが分かり、その様子に満足した様子で四季が口を開くと同時に広間の戸が再度音を立てた。

「ったく、帰った直後に居なくなるこたあねえんじゃねえのか」

先程の四季同様に徳利を手にした永倉の姿に四季を除いた四人は揃って大きく息を吐いたのだった。


真相は闇の中
(ちょ、新八っつぁんっ)
(……新八さん、空気読めないにも程があるでしょ)
(ま、まあ……あれだ、新八も呑むよな)
(なんか良く分からねえけど、おう)
(そんじゃ、俺の隣だよな勿論)
(……続きを話せ)
‐End‐
20101014.