- ナノ -

安眠

※SSL
暑い、と言うわりには俺の背中に体重をかけたきり動く気配のない左之助。授業の空き時間、風に当たろうと缶ジュース片手に屋上へ向かうとそこには先客が居た。ちなみに普段の俺は専ら缶コーヒー派、と言っても流石にこの陽気の中ホットを飲む気にはなれずに久しぶりにその炭酸飲料へと手を伸ばしていた。
プルタブを開けつつ日陰へと寄り掛かって日差しを避ける。俺が来るまで吸っていただろう煙草を携帯灰皿に放り込み爽やかな笑顔を向けて歩み寄る左之助にへと隣を空ければ。

「四季、腰下ろせよ」

ぐい、とネクタイを引っ張られて無理矢理にとその場へ腰を降ろす羽目になる。そういや左之助も授業は無えんだろうかと、何処吹く風で俺の缶ジュースに口を付ける左之助に聞けば、ちょうど俺と同じく空き時間だそうで。教師二人が本来授業があるべき時間帯に屋上で休息ってのも如何なもんかと、まあたまにはこういったのも良いんじゃねえか、浮かんだ疑問にそう納得付ける自分が居た。

「はあ、ったく背中にだけ汗かいちまいそう」

緩く吐息しつつ言ったところで返答は無い。どうしたもんかと首だけで振り返れば、顔を僅かに俯かせるようにして寝息を漏らす左之助の姿があった。

「……珍しい顔してんな、左之助」

仕方無しにと、左之助を起こさないよう体勢を変え所謂膝枕と呼ばれるそれに落ち着かせる。額にかかった前髪を鋤くようにして横に流せば普段より幾分か幼く見える表情に俺は自然と笑いを漏らした。


安眠


(お前が居るって考えると妙に安心しちまってな)
(おはようとばかりに顔を覗き込めば緩く笑みを浮かべてそう返された)
‐End‐
20110607.