戯れ
「ん、平助ちょっと待て」
「あれ……龍之介の奴、何してんだろうな」
巡察の帰りに八木さん家の庭で一人佇む龍を見付けた。平助に一声かけて視線を向ければ龍はしきりに辺りを見渡して慌ててる様で、俺達は互いに顔を見合わせた後に龍の元へと向かった。
「龍、何してんだ。なんだか慌てた様子だったが」
俺達が傍に居た事によほど驚いたのか俺の問いかけに大袈裟な程に肩を跳ねさせた龍はまたもしきりに辺りを見渡した後に声を殺して訳を説明してみせた。聞く話によると総司がまた龍に何かしらのちょっかいをかけたみたいでその尻拭いに当たってるとの事。なんつうか総司も総司で龍が絡むと妙に餓鬼くさくなるよな。
「それで、これを戻しとかなきゃっつう事か」
「……ああ、ったく沖田の奴何だってこうも俺に構うんだ」
「あー、まあ龍之介の事を気に入ってるっつう事で良いんじゃないの」
平助の言葉に苦笑を一つ、龍に至っては盛大に肩を落として見せた。
「龍、それ渡せ。俺が土方さんの部屋に戻してくるから龍と平助は俺の部屋に籠ってろ。総司が何か言ってきても適当に流しとけよ」
吐息を一つ、問題の発句集を受け取れば。きょとんとした表情の後に安堵の息を漏らした龍は珍しく緩い笑みを浮かべた。
「あ、平助」
「んー?」
「棚に菓子入ってっから食って良いからよ。あ、春本もあるから見たいなら勝手にどーぞ」
そういやと菓子の在処とついでとばかりに要らぬ情報を伝えれば平助は顔を真っ赤にしてそっぽ向きやがった。ちなみに龍も、しきりに瞬きをした後に平助同様真っ赤になっちまった。
「ふ、ばーか。二人とも餓鬼だな、たかが春本ごときで初な反応してくれちゃって。かーわいいの」
二人の新鮮な反応が妙に気に入っちまって頭をぐしゃりとかき混ぜれば。慌てた様子で払われた手に笑いが込み上げてきた。
戯れ
(……なあ、棚見てみるのか)
(な、りゅ……龍之介が見たいっつうなら)
(ば、ばかやろ、俺は見たくなんか無いからな)
(平助も龍も素直になれば良いのによ)
(#名前2#君っ、居たなら居たって言えよっ)
(お、俺は別にっ)
(ふは、可愛い奴らめ)
‐End‐
男主と井吹シリーズ│男主+藤堂+井吹
設置/20110415〜20110603