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衝動

※SSL
龍之介、と呼び掛けに振り返ったその身体に覆い被さるかのように抱き着けば。バランスを崩した龍之介が前方へと転がりかけるのを咄嗟に腕を掴んで抱き寄せる。二人して地面に座り込んで息を乱す様は端から見れば首を傾げる光景だろうなと、頭の片隅で考えつつ腕の中でしきりに呼吸を整えようとしている龍之介に怪我は無いかと確認した。

「あ、んたは何だって急にっ」

息を荒げて言う龍之介に素知らぬ顔して首を傾げる俺。一呼吸の後に気持ちが落ち着いたのか吐息を漏らす龍之介の手を引いて立ち上がらせた。

「いや、龍之介を見付けたから」

俺にしては至極真っ当な解答をすれば。しきりに口を開いたり閉じたりと繰り返した後にかあ、と耳まで赤く染めた龍之介。なにこいつ、すげえ可愛い。

「な、ば、ばかだろっ だ、だからっていきなり抱き着く奴があるかっ」

ふい、とそっぽを向く龍之介と堪らず笑いを漏らす俺。どうしたって照れ隠しにしか見えなかったから。そんな面して言ったところで何の効果もねえよ、笑いを隠すことなく耳元に囁きかければ途端に肩をびくつかせて俺との距離をとる龍之介がもうどうしたら良いのかってくらいに愛おしくて仕方無くなった。


衝動


(ねえ、二人とも僕らが居るってこと頭に無いよね)
(まあ良いんじゃね、俺はあいつらがいちゃつこうと関係ねえし)
(ふうん、つまらない反応だなあ)
(な、それなら総司こそどうなんだよ)
(別に僕が楽しければなんでも良いよ)
(……はあ、総司に聞いた俺が馬鹿だった)
‐End‐
20110601.