- ナノ -

屋上

※SSL
目が覚めた後にあったのは#名字2#が俺を覗き込む姿だった。どうやら俺は宮路の膝へと頭を落ち着かせているようで、所詮膝枕というものだと。気付いた瞬間に妙な羞恥心が込み上げてきて姿勢を正すようにして頭を上げた直後にふらつく意識。目の前の宮路は慌てた様子で俺を元の位置に戻すと安堵の溜め息を吐いた。

「いきなり起き上がるのはまずいだろ、君のそれ多分熱中症だしな」

言われて気付けば確かに頭のふらつく感じに加え喉が乾くといった典型的な症状のように思われる。でもそれならどうして俺はそんな事態に陥っているのか、と疑問に思わずにはいられなかった。

「驚いたってもんじゃなかったからな、昼休憩がてら屋上に来たら井吹君が倒れてるんだから」

つまり俺はスケッチ中に気を失ったのかと、そういえば今日の日差しは妙に照りつけが厳しかったと他人事のようにぼんやりと考える。宮路はと言えばそんな俺の額に手をやって自分の体温と比べて見せた。当てられた掌の体温が火照った体には心地好く、無意識ながらに擦り寄せれば宮路は数回の瞬きの後に緩く笑みを浮かべた。

「悪かった」

頭上にある太陽が煩わしく瞳を閉じながらも謝罪の言葉を口に出す。まだ聞いちゃいないがもしかすると宮路は授業があったのかもしれない。時間的に考えればおそらくとっくに授業は始まっているはず。一生徒の為に教師が授業に遅刻ってのは如何なものかと、脳内を過る不安に駆られて唇を噛み締めた。

「ばか、んなこと気にしなくて大丈夫だって。俺は今の時間帯空きだからさ」

緩く髪を鋤く宮路はそう言って笑うもんだから。あんた俺に甘過ぎだろ、悔し紛れにそう呟けば、昔からの癖みたいなもんだからな、そう返した宮路はくつりと喉の奥で笑った。


屋上


(あと30分はこうしてやれるからな)
(頭を緩く撫でられて言われた言葉は落ちてくる瞼の重みで消えていった)
‐End‐
20110528.