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強がりと疲れは表裏一体

※リバ注意
「組長、」

ぽつりとそう口に出した四季の声はこの場に似合わない程に真剣身を帯びていた。第一、普段の四季は隊務時を除いては自分の事を左之と呼んでいたはずだ。勿論今は隊務に着いているわけでもなく、むしろ共に酌をし、日々の疲れを癒しているところである。それならば何故、この場にそぐわない役職名で自分を呼ぶのか原田には首を傾げる他無かったのだ。

「……改まってどうした」

いつになく真剣な四季に崩していた姿勢を正し真っ直ぐと向き合えば。俺はあんたが心配なんです、そう続くのが分かった。

「もっと、俺を頼って欲しい。間借りなりにも俺はあんたの、組長補佐なんだ……だから、」

徐々に小さくなっていく声に些か不安を覚えつつも落ち着かせるように頭を軽く撫でる。その行動に驚いたかのように勢い良く顔を上げる#名前2#。対する原田は瞳を僅かに見開いて見せた。

「あんたがそうやって、俺を甘えさせるから。俺はあんたが好きだし、あんたにこうして甘やかしてもらうのも嬉しくて仕方がない。でも、左之さん……ならあんたは一体誰に甘えるんだ」

じっと見詰められてそう言われれば原田としても視線を反らすわけにもいかず負けじと見詰め返す。俺はあんたが心配なんだ、そう呟かれた後に不意に視界が反転するのを感じた。

「……っ、おい」

慌てて声を上げれば実に穏やかな声で大丈夫だと呟かれる。その声音に予想以上に落ち着きを貰うことが出来たのは相手が他ならぬ四季だからだろうとぼんやりと頭の隅で考える。島原の女には負けるがこれもこれで乙なものだと女に比べて硬い膝に対して口元へと緩く笑みを浮かべれば。

「ん、漸く笑ってくれたな。あんたってさ自覚無いだろうけども疲れが溜まってる時は笑顔に無理があるんだって知ってたか」

くく、と喉を鳴らし楽しそうに笑う#名前2#にお手上げだとばかりに手を挙げる。その手を取られ、甲へと口付けを落とされた刹那。不意に襲った眠気に逆らえず原田は静かに瞼を閉じたのだった。


強がりと疲れは表裏一体


(好きだ、)
(知ってるっつの、ばーか)
(うん、あえて言った)
(……俺も好きだ、)
(ありがと、左之さん)
‐End‐
20101012.