- ナノ -

掴む

※SSL
自分の頭はどうも柔軟性にかけているのだと思われる。他の人間が聞けば、それがどうかしたのか、と。そんな返しが寄越されるのだと容易に予測できるが故、尚更に自分がいかに頑固なのか、頭が固いのかと実感する羽目になる。ならばと、少しばかり柔軟に物事を考えられれば楽だとは分かっているが、この頭はどうしたってそれさえもさせてはくれないらしい。もう幾度と繰り返した思考の波が再度脳内を駆け巡るのを感じ、終いには頭痛まで起こすのだから溜め息を吐く他ならない。

「あんた、どうかしたのか」

聞こえた声に振り返ればそこにいたそいつはじっとこちらを見詰めてくるものだから。部活は、だとか。そういったことだって聞けただろうに、頭に鳴り響く音が煩わしくて。悪い、そう断って肩へと頭を預けた。暫くの後に緩く髪を撫でられるのを感じ瞳を閉じる。躊躇いがちに、背中を緩く擦られ、そして落ち着かせるかのように軽く叩かれる。普段の自分ならばこうして自身の弱味を見せることなんて避けたいと思うのに、何故か、今日だけは目の前に居たこいつに縋りたいと、そう思ってしまうのは弱さ故なのか。


掴む


(シャツにしがみつく俺をこいつは決して振り払おうとはしなかった)
‐End‐
20110526.