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いたずら

※SSL
いつもはふてぶてしく生意気――同い年相手にこう言うのもあれだが――な総司は時折ふと甘えというのか、つまりは普段と違い妙に懐いてくる時がある。それはまさに猫の様だと、そう思ったのはもう何度目か。

「なあ総司、俺アイス食いてえんだけど」

練習後の帰り道、道中にあったコンビニを指差しながらそう言えば、僕は別に食べたくないよ、だなんてなんとも可愛らしくない言葉を返すもんだから。なら総司は先帰ってて構わねえから、と。背中越しに手を振ってコンビニへと入れば途端に駆け寄ってきた。くい、とワイシャツの裾を引っ張られて振り返ればそこには僅かに俯いた総司が居るもんだから、ああまたスイッチが入ったなあ、だとかなんとか考えつつも選んだ物に加えて総司のお気に入りのアイスを引っ付かんでレジへと向かった。


「総司、それ一口頂戴」

二人、公園のベンチに座ってアイスを口にする。不意に思い立った悪戯心を隠しつつ総司の持つアイスを指差せば。数秒の戸惑いの後に差し出されたそれに俺は満足げな笑みを浮かべ、総司の手から受け取るもなく未だ総司が持ったままのアイスへとかじりついた。

「ん、総司も食うだろ?」

口の中で溶けていくアイスに舌鼓を打ちながらも、そう言ってアイスを差し出せば。きょろきょろと辺りを見渡した後に遠慮がちに先程俺がしたようにかじりついてくるのが分かった。それに対してアイスを総司から遠ざけて一口かじる。見れば総司はきょとん、と瞳を瞬かせてる。普段だったら絶対に文句を言われるだろう場面に笑いそうになるのを堪え、総司の肩に手をかけぐっと引き寄せる。驚いた拍子に開いた口へと口移し宜しくアイスを流し込めば。

「……っ、四季君」

と、顔を真っ赤にした総司を拝むことが出来た。


いたずら


(はいはい怒るな怒るな、と)
(髪を撫でつつ言えば擦り寄ってくるもんだから)
(猫だよなあ、と何度目か分からない思考に小さく息が漏れた)
‐End‐
20110521.