放課後、
※SSL
「失礼しました……と、んあ、一どした、んなとこで」
職員室からの帰り、さてと教室戻るかうわもうこんな時間じゃんちくしょう夕陽が眩しいぜ。だとかなんとか考えてりゃ急にワイシャツの裾を引っ張られるのを感じた。見れば俺の少し後ろにいたそいつは俯いたままにぎゅう、と更に裾を引っ張る力を強めた。
「一、」
肩に手を置いて顔色を伺おうと覗き込む。何故か分からねえけども一は肩を一つ跳ねさせて顔を見られたくないのかそっぽを向いた。いやまあ人間ってのは逃げられると追いたくなるもので。どうにかして一の表情を知りたかった俺は両手で一の頬を包むようにして半ば強引にこちらを向かせてみた。
「……へ」
いつだかと同じように随分と間抜けな声が出たと思う。でもほら俺の反応は決して間違っちゃいないはず。そりゃあ一がこの間の屋上での一幕のように顔を赤らめてりゃ呆気に取られるのも無理ないだろって話。
「……来い」
そうこう考えてるうちに聞こえるか聞こえないかの声量でそう言われ、途端に腕を引かれる。俺の方を一切見ようともせず、一はひたすら何処かへの道を進んで行った。
「一、どうしたんだよ急に」
連れてこられたのは多分、一のクラス。当然ながらこの時間帯はもう人影は無い――窓際から差し込む夕陽が妙な情緒を生み出していたけども。
「……っ、」
一と向き直ろうと今まで引かれていた腕を今度は引き返そうとすれば。逆に再度引かれ、そして何故か、俺の視界は反転して今は天井と、俺に覆い被さった一がよく見える、つまりは机に押し倒された体勢となった。
放課後、
(不意に視線が絡み合う、)
(絡んだ視線を逸らすことなく挑むように見詰め続けた)
‐End‐
20110516.