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告白の、その後

※SSL
「で、四季……てめえは何で当たり前のように此処に居るんだよ」

夕食の片付けを終え、食後の一休みを満喫していれば。ふと今気付いたといった様子で歳さんが聞いてきた。

「え、そりゃあ流れで。あー……歳さんが構わねえっつうんなら泊まってきたいなあ、とか」

ちらりとベランダで紫煙を吐いている歳さんを伺いつつ聞けば。数回の瞬きの後に携帯灰皿で煙草を揉み消しつつ室内に戻ってくるのが分かった。

「明日は俺、選択の関係で一限無いから」
「……馬鹿かてめえは、一限が無えっつったところでホームルームはあるだろうが」
「……あー、あとで左之に連絡……っつ、ちょ、じょーだんだってじょーだん」

歳さんの返しにうーん、と首を捻り浮かんだばかりのそれを口に出すと同時に頭を叩かれる。ちょっとした冗談がまるで通じない歳さん、流石。

「……歳さんが駄目っつうんなら駅前にバイク置いてあっから帰るけど、」

はあ、やっぱり駄目だよなあと。半ば諦めの気持ちでそう呟けば。数分の間の後に、今日だけだからな、と同意の返答が聞こえてきた。

「……俺は酒が入っちまってるし、いくらなんでもこんな時間に生徒を外に放り出す真似はしねえよ」

緩く笑みを浮かべながらのその言葉が何故か妙に嬉しくて。それまで抱き抱えていたクッションを放り、歳さんへと抱き着いた。

「へ、あれ……何どしたの、歳さん。いつもみたいに逃げないけど」

普段なら暴れるだとか、そういった行動があってもおかしくないはずなのに俺の腕の中に居る歳さんは一向に逃げ出す気配が無い。それどころか、先程の職員室での一幕のように俺の胸へと擦り寄ってきてくれて。

「今日だけ、だ」

掠れ気味な声音で返されたそれは歳さんにとって思いの外羞恥心が込み上げてくるものだったようで。次第に耳元へと赤をさす歳さんはせめてもの抵抗とばかりに俺の胸へ顔を見られないようにとぎゅうっとしがみついてきた。

「ふは、可愛いなあ歳さんは」

緩みきった顔で耳元へとそう囁けば。ひくり、と。肩を揺らした歳さんに愛しさが込み上げてくるのが分かった。



告白の、その後


(……歳さん、すげえ大好き)
(……っ、そうかよ)
(ね、歳さんからも……聞きたいんだけど、)
(……俺も、好き……だ)
(ふは、ありがと歳さん)
‐End‐
20110510.