- ナノ -

これ全部玄関での出来事ですから。

「銀時、遅くなっちまって悪い」

玄関の扉のガラガラ音の後に響く四季の声。いやいや銀サンそんなに待ち望んでたって訳じゃあないからね、ただちょーっと寂しいなとか思ったりしなかったりした訳じゃあなかったりまあそんな感じです、まる。

「旦那ァ、邪魔しやすぜィ」
「……いやいやいや」
「あれ、坂田さんってばどうしたの。そんなところで立ってるなんて」
「あー、銀時……お前が言いたい事は良く分かる、が。とりあえず入って良いか」


はい、では銀サンの分かりやすーい状況整理講座の始まり始まりー。ではまずそこの君、今日の日付を言ってみようか。はい、正解。要するに今日、10月10日は銀サンのにじゅうぴー歳の誕生日だったりする訳です。どぅーゆー、あんだすたーんど。
で、俺は四季の非番が運良く被ったおかげで二人でパフェを食いに行くっつう約束をした訳で。かいがいしく四季が迎えに来るのを待っていたのが今から数分前の事。
そんなこんなで鳴らされたインターホンに玄関へと向かえばそこには両サイドに沖田君を抱えた四季が居たっつう訳。あのー、今日は俺が四季とデートする約束だったんですが邪魔してるよねこれ明らかにー。

「いくら旦那でも四季さんを独り占めは許しやせんぜ」
「ぱふぇ、だっけ。僕達も一緒しようかって沖田君と話していてね、良いよね坂田さん」

良いよねっていうかもはや決定事項の様に話すこのW沖田もとい沖田's。世の中の沖田姓の皆さーん、この子達みたいに黒くなっちゃいけませんよー。

「悪い銀時、言い聞かせても聞く耳持たずでな」

苦笑しながら俺に謝る四季に意識を戻す。まあ確かに、銀サンは四季と二人きりが良かったんですけど。いやいやでも確かにこの沖田'sは俺の言う事なんて聞きやしないし。要するにこれは四人で仲良くパフェを突きましょっていうフラグが立つパターンですかコノヤロー。

「旦那に四季さん、行くんなら早く行きやしょう」
「沖田君もこう言ってるしほら、坂田さんも早くそれ履きなよ」

俺が俺と葛藤してる最中に沖田'sは好き勝手喚き散らす訳で。あれ今日なんの日だっけかって泣きたくなったのは銀サン一生の不覚だと思いました、あれ作文。

「あー、銀時……ちょっと」
「なんですかー、銀サンは今絶賛ふて腐れ中なんですー」
「……今度また埋め合わせするから、今は我慢してくれ、な」

ちゅ、って。少女漫画とかでよくある擬音語が聞こえたのは四季に腕を引かれた直ぐ後で。傍で沖田'sが喚いてるのも通り抜けて、俺の腰が抜けるまで後――秒。


これ全部玄関での出来事ですから。


(旦那ー、狡いですぜィ)
(ねえねえ四季さん、僕にも)
(駄目ですー、四季は銀サンのですからー)
(……はあ、お前らいい加減落ち着けって)
‐End‐
20101010.