こくはく
※SSL
「あ、俺が部誌出しに行くから一達は先に帰って大丈夫だからな」
一が書き上げた部誌を受け取り部室へと鍵をかける。普段そう言ったことをしない俺が今日に限って何故、と。一が首を傾げて見せる、ちなみに総司はにんまりと子憎たらしい笑みを浮かべていた。
「歳さんに呼び出し、されてっからさ」
緩む頬を引き締めあくまでも何ともないように理由を説明すれば。相変わらずだよねその呼び方、だなんて大して興味も無さげに欠伸混じりで呟く総司と分かった、と律儀に首肯する一。
「まあ、四季君の事だしどうせ碌でも無いことしたんじゃないの」
スクバを肩に背負いつつ言われたそれに適当に相槌を返し、職員室への道を急いだ。
「歳さん、どしたの。まさか、告白だったり……っ、ちょ、ひど」
時間も時間だし目的の人物しか室内に居ないことを確認済み。がらりとドアを開けつつそう言って歳さんへと抱き着けば。阿呆、と問答無用で頭を叩かれる――ちなみに凶器は俺がたった今持ってきたばかりの部誌だから角がヒットして地味に痛い。
「……はあ、てめえは一体何がしてえんだ何が」
紫煙を吐き出しつつ渡されたそれに口端が吊り上がるのを感じる。渡されたのは部活前に提出した学級日誌だった。
「これがどうしたんですかー、土方センセ。ちゃあんと口で言ってもらえなきゃ分からないでーす」
我ながらすげえ腹立つような口調でわざと聞き返せば。眉間にいつもの倍皺を寄せた歳さんにおもいっくそ睨まれた、うお、迫力あるねえ。
「……これだこれ、馬鹿な事書いてんじゃねえよてめえは」
ふう、と。あからさまな溜め息と共に指されたのは週直から担任への連絡欄。そこには部活前に俺が書いた歳さんへの熱烈なメッセージがある。
「週始めから頭寝てやがんのかてめえは、ったく」
「……えー、だってほら今日はそう言う日だし」
頭が痛いとばかりにこめかみを揉む歳さんに仕方無しと理由を説明する。中途半端に言いかけたそれに首を傾げる歳さんと相変わらず嫌味な笑みを浮かべたままの俺、暫くの無言の後に良いから続きを話せと、指で指し示された。
「ねえ歳さん知ってる? 今日って告白の日なんだってさ」
言うと同時に先程しくじった分も含めて歳さんに抱き着く、あ、違った歳さんを抱き寄せれば。
「……だから、改めて告白してみた。ほら最近学期始めで忙しかったから、俺なりに恋人らしさを求めてみました」
俺の急な行動に身を捩らせて逃げようとする歳さんの肩口に顔を埋めて呟く。うん、こういう時に相手より背が高いってのは便利だなあと、いまいち場違いなことを考えてたり。そうこうしているうちにいつの間にか抵抗を止めた歳さんは俺の髪を緩く撫でてくれて。
「……本当、てめえは下らない事しやがって」
返された言葉とは裏腹に、ぎゅうっと擦り寄られたもんだから堪らずに目の前の身体を掻き抱いた。
こくはく
(5月9日8時9分で告白、なんだってさ)
(そうかよ、)
(ん、ちなみに今の時刻は20時9分だったり)
(……狙ったのか、)
(ふは、実はね)
‐End‐
20110509.