- ナノ -

ひとまえ

※SSL
「なあ素朴な疑問なんだが」

昼休みの屋上。天気は快晴、五月特有の暖かな日差しに包まれた中の昼飯時。龍之介の一言でそれは始まった。

「んー、どうしたんだよ龍之介。急に改まっちゃってさ、あ、俺の唐揚げはやんねえから」
「誰もお前の唐揚げなんざ狙ってない、俺が聞きたいのはあんたと斎藤についてだよ」

平助がけらけらと笑う中、不意に出された名前にそれまで咀嚼途中だったサンドイッチをパックのカフェオレと共に胃へと流し込む。

「俺と一が、どうした?」

見れば一も続く言葉を待つように箸を置いていて。ちなみに平助は未だに唐揚げを口へと放り込む最中だったり。

「……あんたと斎藤って、その、付き合ってんだよ、な?」

見てるこっちが居たたまれなくなる様な声音で問われたそれに瞬きを一つ。どうしてお前がそんなに照れてんだよ、と。龍之介へと苦笑を漏らしつつ一の方へと視線を移せば。

「え、」

俺の呟きは決して間違っちゃいない。だって考えてもみろって。あの一が、普段めったやたらに表情を崩さない一が俯き気味に耳元へまで赤をさしてりゃそりゃあ驚くのも仕方無いだろ。

「今更じゃん、四季と一君が付き合ってんのなんて」

いつの間にか出したのか、購買で買った棒アイスを銜えつつ言った平助に首肯すれば。

「……その、あんた達って普段そう言った雰囲気出さない、だろ」

もごもごと言われたそれに一の肩が一つ跳ねる。まあ確かに人前でいちゃつくってのは相手の精神衛生上にもあまり宜しくないだろうし、そもそもそう言った恋人同士の距離感ってのは人それぞれな訳で。

「あー、なんだったら今この場でちゅーでもしてみっか」

悪戯半分に一の顔を覗き込んで言えば。頬を赤く染めた一に思い切り頭を叩かれる羽目になった。


ひとまえ


(あー、はいはいご馳走さま)
(どうすんだよー四季、一君固まっちゃったじゃん)
(……いや、沖田はいつの間に来たんだよ)
(別に僕がいつ現れようが井吹君には関係ないでしょ)
(つか誰か俺の心配しろって、今すげえ音したからな)
(……あんたが人前で可笑しな事を言うからだろう)
(ふうん、人前じゃなきゃ良いのか)
(あはは、一君墓穴ー)
(……っ、)
(斎藤も大変だな)
(まあ、今のは総司のせいじゃねえの)
(ふは、一すげえ可愛い)
‐End‐
20110506.