- ナノ -

惚気る

※SSL
「だーめ、俺は今日歳と一緒に飲み行くの」

昼時の職員室、聞こえた名前に釣られるようにして向かいの机を覗き込む。座った状態で目の高さに設置されている衝立を避けるように上から覗き込んだ土方はそこで繰り広げられる会話に軽く目眩を感じたのだった。

「へえ、四季さんは僕との誘いより土方さんなんかを取るって言うんだ?」

不貞腐れた様子で尚もぐずる沖田と、はいはい、と軽くあしらう四季がそこには居た。盗み聞きは如何なものかと思う手前、どうやら自分についての事だろうと察し続けられる会話に聞き耳をたてつつ居れば。

「なんか、じゃねえよ総司。つかお前はもうちっと相手の都合も視野に入れてから遊びに誘えっての」

ふあ、と欠伸を漏らしつつ言われたそれに沖田は唇を尖らせむくれるのだった。

「そんな事言って四季さんってば結局は土方さん優先なんでしょ」

ばーか、と。年齢相応な態度を示す沖田に土方は向かい側から僅かに苦笑を漏らせば。それにいち早く気付いた沖田は何かを思い付いたかの様子で口元を吊り上げて見せたのだった。

「ねえ四季さん、土方さんの何処がそんなに好きなの?」
「……んー、そうだな」

ちらりと土方へ視線を投げた後に四季へと問われたそれに土方は危うく飲んでいた茶を吹き出しそうになる。なんとかそれを堪えつつ沖田へと一睨みを利かせ四季の続ける言葉へと意識を戻せば。

「全部、だな。歳って言う人間を構成する全てを俺は愛してるんだよ」

ふ、と柔らかい笑みを浮かべながら言われたそれは土方の頬を容易に赤くさせるのだった。

「はいはい、やっぱり下手に口出しするもんじゃないですねー。惚気でお腹いっぱい、ね、土方さん?」


惚気る


(ふは、歳顔真っ赤だし)
(うるせーよ、ったく……気付いてたのか)
(はいはい、それじゃ総司はさっさと教室戻れよー。こっからは俺と歳の時間だから)
(あ、土方さんに早めにお見舞い言っときます)
(……何がだよ)
(だってほら、明日は腰痛が酷そうだなあ、なーんて)
(な、)
(歳可愛いー)
‐End‐
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20110505.