不意討ち
「わお、相変わらずシリウス君はモテモテな事で」
談話室に帰ってきたシリウスの両手には溢れんばかりのチョコにキャンディにその他諸々。そんな色とりどりの菓子類に大して当の本人の顔色はあまり良くない様子で。具合が悪いだとかそんなんじゃなく、眉間によった皺がものすごいのなんの。試しにぐにぐにと指で弄ってみれば煩わしげに手を払われた。うん、寂しい寂しい。
「……お前も似たようなもんだろ」
どさりとテーブルにチョコを投げ出すと同時に呟かれた言葉。がさがさと音のする袋を見せれば溜め息と共に苦笑された。
「なあシリウス、俺にも無いわけ? バレンタインのチョコ」
端から見ればさぞ苛つくだろう笑みを浮かべてソファーに寝転がるシリウスに覆い被さるようにして聞けば。ほらよ、そんな飾り気の無い言葉と共に投げ渡された小箱に瞬きを一つ。不意をつかれた事によって上がった心拍数を誤魔化すように、お礼とばかりに額へとキスを落とせば。くすぐったそうに身を捩りながらも緩く微笑んだシリウスをぎゅう、っと抱き締めたくなった。
不意討ち
(うう、ちくしょう大好きだ)
(俺も、好き)
(ちょ、その顔すげえ可愛過ぎ)
(……ばーか)
‐End‐
20110215.