- ナノ -

プレゼント

※SSL
「龍之介、今帰りか?」

背中越しに聞こえた声に振り返ればそこには両手いっぱいに箱やら紙袋やらを抱えた宮路が居た。そういえば今日はバレンタインだとか言う日で俺も今朝方、雪村に友チョコとか言った物を手渡されたと一人自己完結をする。

「あんたは、随分と沢山貰ったみたいだな」

ただ何となく、黙りきりなのも居心地悪く感じてそう口に出せば。いつの間にか隣を歩く宮路は緩く首を振って見せた。その行動の意味が分からずに首を傾げれば、口を開く気配があって宮路の方へと視線を向けた。
本命に貰えなきゃ意味無えよ、そう呟いたきり宮路が黙りこむもんだから俺もどうして良いか分からずにただお互い口を開く事なく歩いていた。


「なあ龍之介、だから俺は決めたわけ。貰えないならこっちからあげちまえってな」

これはさっきの会話の続きなのか。微妙に繋がった話に耳を傾けていればブレザーのポケットから何かを出して宮路はそれを俺に差し出した。手のひらにあるのは色とりどりの飴で、渡した本人はにんまりと笑みを浮かべてる。

「だから、俺からのバレンタイン。意味分かるだろ」

へらりと笑って半歩先を歩く宮路はさも満足した様子で足取り軽く歩いていた。ちなみに俺はと言えば、言われた言葉が漸く頭に行き着き、そのあとは不本意ながら熱くなる頬をどうやって隠そうかといった疑問に苛まされていた。


プレゼント


(で、お返事は?)
(確信しきった表情で笑う宮路の脚をおもいきり踏みつけた俺は決して間違っちゃいない)
‐End‐
20110214.