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しきりなおし

※SSL
学校からの帰り道、一人車を走らせていれば街中に見知った奴らの姿が見えた。世間様は皆クリスマス一色だってのに俺一人学校に缶詰で資料と睨めっこなんざとんだクリスマスプレゼントだろ、とかなんとか考えて居た矢先に二人を見付けたもんだから飲みにでも誘って鬱憤を晴らそうかと声をかけようと近付けば。何やらいつもと様子が違う、何がおかしいんだと考え二人の姿を凝視すれば何故か、その二人――左之助と新八が二人仲良く手を繋いでいた。いやいやいや何の冗談だよこれ。そりゃあ確かに二人は今恋人は居ねえって言ってたがいくらなんでも大の男が二人、クリスマスに手を繋いで街中を歩くなんざどう考えてもおかしいだろ。その証拠にすれ違う人は揃って目を見開くか視線を逸らすか――中には嬉々とした表情で二人を凝視する女もちらほら居たが――している訳で。あまりにもいたたまれなくなり車の速度を僅かに上げて二人へと近付いた。

「よう左之助、新八。二人揃って水臭えじゃねえかまさか二人が出来てるなんざ」

これで肯定されたらどうしようか等と考えつつ運転席の窓から声をかける。二人は俺の姿を認識した途端すげえ勢いで近付いてきた――ちなみに未だ手は繋がれたままだったり。

「四季ー、良いところに来たなっ」
「はあ、何恐ろしい事言ってやがんだお前は」

新八からの助けを求める声と、左之助の呆れた声に吐息を一つ。とりあえずと、状況整理の為に話を聞こうと車を路肩に寄せた。


「つまりは忘年会の罰ゲームでそんな事になってる、っつうことか」

首がもげるんじゃねえかって勢いで強く頷く新八と苦笑を漏らして肩を竦める左之助。いやまあ俺は仮に二人がそんな関係になったとしても祝福してやりたいとは思うが正直今の所は二人のこうやって馬鹿やってる面が好きだったりする訳でほっと、気持ちが安心したのを感じ俺は緩く笑みを浮かべて見せた。

「……それよか四季、お前何で今日参加しなかったんだ?」

不意に問われた言葉にさっきまでの虚しさが少し蘇って来て。確かに仕事は好きだしやんなきゃいけねえ事だってのも理解してるがやっぱり誘われた忘年会を断るのは結構寂しかった訳で。その事を簡単に説明すれば二人は一度顔を見合わせた後ににっこりと笑うと後部座席のドアを開けて揃って乗り込んできた。

「んじゃ、今から飲み直しすっか」
「だな。勿論、場所は四季ん家で頼むぜ」

へらりと笑ってそう言う二人に俺はバックミラー越しに肩を竦め、そして車のエンジンをかけた。


しきりなおし


(何渋ってんだもっと入れろよ)
(んな事言ってもお前らそんなに買っちまって大丈夫なのか、さっきまで飲んでたんだろ)
(ばーか、良いんだよ今日くらいは羽目外したってよお)
(ま、新八の場合いつもと似たようなもんだけどな)
(ふは、そりゃあ言えてる)
‐End‐
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20101224.