放課後
※SSL
少し手を貸せ、と。教材室に引きずり込まれたのが今から十五分前。今現在俺の目の前にあるのは数百枚にも及ぶだろう紙の束。ちなみに俺に面倒事を丸投げした張本人はただいま部活の指導真っ最中だったり。
「こういうのを職権乱用と言うんだろうが、歳さんよお」
指示された通りに書類を束ねホッチキスで留める作業をひたすら続けながらも口では文句を言うことも忘れず。着々と積み上がって高度を増していく書類の山はもうそろそろで百部を超える、はず。俺も大概甘いよなあ歳に、と一人吐息しながらも手を動かし続ければ、ふと視界の端にちらついた時計の針は午後八時をゆうに過ぎていた。
「終わったか、四季」
不意に感じた人の気配に扉へと振り返ればそこには未だ袴姿で首にタオルをかけて、うっすらと浮かぶ汗はそのままに片手に缶コーヒーを持った歳の姿。ばか、風邪引くだろうが。口に出すのとほぼ同時に立ち上がり傍に駆け寄ってタオルを使って髪を拭う。ガキじゃねえから放っておけ、なんて口では言うもののその表情は穏やかで。あれ、俺結局歳の面倒見てるじゃねえかと我に返れば。
「悪かったな、任せきりにしちまって」
普段のふんぞり返った姿とは違って、眉根を下げて苦笑を浮かべる姿にこっちまでそれが伝染して。んな大したことじゃねえけど、一杯付き合えよな、と。歳本人に道を与えつつ、かつ俺も美味しい思いの出来るだろうそれを口に出せば。なら、車は置いてかなきゃならねえな、と吐息交じりに返される。
「……っし、ならさっさと仕上げて飲み行くか。ほら、お前は着替えてこいよ」
再度書類の山に向き直り背中越しにそう言えば。
「ああ、行ってくる」
軟らかな響きを持った言葉を残して歳が足早に教材室を出て行ったのが分かった。
放課後
(あれ、つか明日も普通に授業あるじゃねえか)
‐End‐
男主と学校生活:男主×土方、放課後。
設置/20120310〜20121204