- ナノ -

昼下がり

そもそもどうしたって俺がこいつの面倒を見なきゃいけないのか、と。自問自答を繰り返すこと早数回、そんな間も隣で呑気にミルクティーを啜る沖田の姿に溜息という名の吐息を一つ。当の本人はそんな俺の姿にも気付かないのか、はたして気付くつもりがないのか、いたって変わらずにミルクティーのパックと向き合っている。

「なんかさあ、そんなに眉間に皺寄せられてちゃこっちとしても気分の良いものじゃないんだけど。ねえ、宮路君」

いつの間にかこちらに意識を寄せていたのか、不意に掛けられたその言葉に思わず眉間へと手を伸ばしかけた、その拍子に俺よりも一瞬早く行動した沖田の手が俺の眉間を撫でる。ちなみに撫でられたからといって俺自身は皺が寄っていたのか否かは分からないわけで。きっと無意識にしかめっ面になっていただろう顔の筋肉を揉み解すかの様に頬へと手をやってやわやわと揉んでいれば。

「僕と居るの嫌なの?」

小さく問われたそれに瞬きを数回。え、今のは沖田だよな。まさかそんなしおらしい台詞が飛び出てくるとは、と隣に居る沖田の顔をまじまじと凝視する。見ればその表情は決して俺の自惚れではないだろうと考えられるほどには歪められていて、それはつまりなんだ、こいつは俺の機嫌が悪いとこんな表情を見せるのか、と。僅かに優越感を感じながらも謝罪の言葉を口にすれば。

「謝る意味を君が理解してるなら良いんだけどね、……はあ、もう良いや」

溜息と共に返されたそれに僅かに身構えながら次に寄越されるだろう言葉に姿勢を正せば何故か、背中にかかった重みに首だけで振り返れば。

「じっとしててよ、僕、眠いんだよね」

いつの間にか俺の背後へと移動した沖田は俺の背中に寄りかかったまま瞳を閉じた。

「はいはい、枕代わりってこと、な」


昼下がり


(たまには子守りも悪くないか)
(そう呟いて見上げた空は青かった)
‐End‐
男主と学校生活:男主×沖田、昼休み。
設置/20120224〜20121204