- ナノ -

深夜

俺に抱えられたままの蘭丸が妙に静かだなと感じて顔を覗き込む。半ば強引に抱き抱えて共にベッドに入って胸元へ促す形で頭を抱いて。肌を重ねることはせず、寝巻き越しに伝わる皮膚の暖かさに次第と眠気を誘われて。いつしか意識がうつらうつらし始めた時、そういえば腕の中のこいつはもう寝たのだろうかと気になった。ベッドに入ってから暫くも暴れていた蘭丸は俺が構わず背中を擦り続けていれば諦めたのか大人しくなった。季節柄肌寒くなり始め、毛布を出していないために暖かさを求めて眠気眼で擦り寄る蘭丸の姿に理性を総動員させたのがほんの数分前。

「らんまる、」
「ん、」

俺の問い掛けに返されるのは寝息とも呻きともとれる吐息で。顔を覗き込んだところで夢の世界に居るのは一目瞭然だった。

「さみ、……ん、四季」

きっと無意識に呟かれただろう名前に肩が跳ねる。衝撃に僅かに身体を揺らした蘭丸はそれでも眠気が勝っているのか起きる気配はない、全く、引き釣り込んだ時はしてやったと思ったのに。


深夜


(俺が負けた気分だよちくしょう)
‐End‐
20121008.