- ナノ -

相応

あんた誕生日だったらしいな。人伝に聞いたそれを口に出せばそのまま互いに擦れ違って行き交う筈だった相手は歩みを止めて俺へと振り返って見せた。成る程、確かに騒がれるだけある面してるわオーラはあるわで一人納得の頷きをすれば目の前のそいつはつかつかと人一人分空いていた距離を詰めてきた。綺麗な顔に訝しげに眉間へ皺を寄せる姿、どうせならもっとその面が引き立つような表情を見せてくれりゃあ良いのにと思うものの口に出すことはしない。

「お前は……二年の宮路か」

俺様に何か用事か。俺よりも僅かに低い位置からのその言葉に瞬きを数回。あんた何で俺の名前知ってるんだよ、と今まさに浮かんだばかりの疑問を問いかければ目の前のアトベは鼻で笑って肩を竦めて見せる。その行動の意味が分からず問い詰めようとした刹那、空気を読まずに鳴り響く始業5分前を知らせるチャイムに舌打ちを一つ。俺から視線を外して腕時計を見るアトベはそのまま俺には一瞥もくれずに三年の校舎へと向かっていった。


相応


(生徒会長だからな俺様は。全校生徒の名前くらい把握済みだ)
(背中越しに聞こえたそれに振り返ってみても既にアトベの姿は見えず)
‐End‐
20121005.