- ナノ -

病人なう

「体調悪いなら携帯弄ってないで寝れば?」

至極最もな意見を寄越す折原にそれまで携帯のディスプレイを見ていた視線を上げる。顔色悪いよ、なんてさして興味も無さげにキーボードを叩きつつ呟く折原の言葉にほっぺたを両手でべたべたと触ってみる。確かに具合は悪いが別に熱があるだとかそういったモンじゃなく、単に持病の偏頭痛が久しぶりにテンション高々仕事に勤しみやがってるだけの話で。ずくんずくん鈍く痛む頭に顔をしかめていればいつの間にか近付いてきたのか折原が俺の額に手を当てて熱を計る。あれ、なにこいつこんな優しかったの。

「熱、は無さそうだけど。ああ、これ没収ね」

仕事だか何だか知らないけど体調悪い時にこんなの見てたって治るわけないからね、だから没収。俺の携帯を自身の机の引き出しに仕舞って帰ってきた折原は俺の肩をおもいきり押すとソファーへと組敷く。寝てて、の一言と共にタオルケットをばさりとかけられる。意外な程に献身的なその言動に俺はと言えばひたすらに瞬きを繰り返すしかなくて。


病人なう


(折原が優しくて怖い)
(呟いた途端に頭を叩かれた)
(ばか、頭響くっつの)
‐End‐
20121004.