- ナノ -

利害一致

カラオケ行きたい、ぶつぶつと呟かれるそれは本来背凭れとして背中を着けるべきそれに前後逆向きで寄り掛かり俺の顔をひたすらに見詰めてくる前の席から発せられたものだった。

「相変わらず唐突だな黄瀬は」

とりあえずとばかりに一番当たり障りの無いだろう言葉を返せば微妙に低くなった声音で「そんなことねえっスよ」そう一言。あ、眉間に皺寄せてるモデルのくせに。そんな黄瀬を観察してりゃあ途端に握られた両拳に思わず肩が跳ねる。

「宮路っち、放課後、付き合って欲しいんスよ」

実にシンプルなその言葉。部活は、と試しに聞いてみたが体育館の都合でオフになったとのこと。ああなるほど、互いに暇潰しか。そうと決まれば答えは一つ。黄瀬の明るい黄色をくしゃりと撫で頷きを返せば何故か、顔を真っ赤にして俺の机に突っ伏した。


利害一致


(おーい、黄瀬、大丈夫か)
(うう、無理っス)
‐End‐
20120926.