前準備
今欲しいものは。
肉。
肉以外は。
松阪牛。
……他は。
れーじン家の唐揚げ。
了解、寿さんに頼んどく。
淡々と問い掛けたそれにこれまた淡々と、至極シンプルな返事を寄越す蘭丸と返されるそれがシンプル過ぎる故に頭を抱えている俺の図がかれこれ15分ほど前から出来上がってるわけで。俺を背凭れ代わりに寄りかかりながらソファーの肘掛けに脚を投げ出してスコアを捲る蘭丸は今俺が何を思ってこの質問を投げ掛けているかだなんて興味も無いらしい。ぱらぱらとページ間が擦れ合う音が無音の室内に響く中、10日後に迫ったそれについて考えればぼんやりとしたアイディアが浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返すばかり。
「ちなみに蘭丸、十日後の予定は?」
「給料日前」
これまた実にシンプルな回答を寄越した蘭丸は欠伸を一つ、手元のスコアをテーブルへ放った後にずしりと体重を預けてくる始末。重え、いや、こいつ細いから別に言うほど重くはねえけど。
「寝る」
本日何度目になるだろう、またもシンプルなその一言を最後に途端に寝息を洩らす蘭丸の髪を一撫でしたところで既に奴は夢の中。吐息を一つ、起こさないようにと妙な真剣さでベッドへと運んだ深夜1時過ぎ。
前準備
(これだから鈍感は)
‐End‐
20120919.