- ナノ -

夜更かし

眠い、と試しに呟いてみれば返されるそれは実にシンプル。なら寝なよ、と。至極尤もな返答に肩を竦めて見せることで遣り過ごせば視線の先に居るそいつは僅かに眉根を寄せて見せるも不機嫌ですといった様子は表さずに苦笑を投げて寄越す。俺の気紛れで見逃しているだけだからね、と釘を刺されては頷かないわけにもいかず。渋々といった態度が全面に押し出されることを願いつつそっぽを向いて小さく頷く。これ飲んだら、送っていくから。そう言われてしまっては、反論することすら無駄な気がして。

「オレはレディじゃないからね、自分で勝手に帰るさ」

せめてもの負け惜しみ。相手の顔なんて一切見ずに視線は床へ、俯いて小さく呟けば。

「俺が送りたいだけだから、レンちゃんは気にしなくて良いよ」

ふわり、と髪を優しく撫でられて。たったそれだけのことに恥ずかしくも頬が熱くなるのが分かってますます顔を上げられなくなった午前0時15分。


夜更かし


(真斗には明日、一声かけておきな)
(……なんで)
(口には出さないけど、心配してるからなレンのこと)
(……忘れなかったらね)
(はいはい)
‐End‐
20120912.