- ナノ -

となり

うつらうつらと首が前後に揺れる姿をぼんやりと眺める。こんな姿は中々見ないだろうなとふと頭が理解すればその場から動くなんて選択肢は消え失せて、とりあえず誰かが来やしないかと辺りを見渡した後に人一人分の間を開けて宮路の隣へと腰を下ろす。

「……っ、」

手を伸ばして、試しにと声を掛けようとした刹那。不意にぐらりと宮路の身体が大きく揺れ、とっさに受け止めたもののこの体勢は所謂膝枕というもので。花街で芹沢さんが芸者にやらせているのを見たことはあるものの自分が誰かにそれをやるだなんて考えたこともなければしたこともなくて。かあ、と顔が熱くなるのが分かって、その事実にもまた更に熱が灯る。

「……っい、宮路っ」

とりあえずと肩を揺すったところで反応は無い。すうすうと寝入る姿は新鮮で、ほぼ無意識に流れる黒髪へと指を滑り込ませれば僅かに洩れる吐息に情けなくも肩が跳ねる。起こしたか、と脈打つ心臓が煩くて。暫くの間身動きをせずに膝に頭を預ける宮路を見詰めていても寝息以外の動作は無く。ふ、と安堵の吐息を溢す昼下がり。


となり


(珍しい状況だね、井吹君)
(肩を叩かれてのその言葉に振り返る)
(にんまりと笑う沖田の姿にさっきとは違う意味の吐息が洩れた)
‐End‐
20120910.