- ナノ -

形勢逆転

腹が痛い、四季くんはぶすっとした表情でそう呟いた。そりゃあぼくが彼のお腹の上に体重を預けて跨がっているわけだから何とも思わないはずがない、まあ四季くんは腹筋も鍛えているし体重を預けるとは言ったけどそこまで本気で乗っちゃうほど鬼畜じゃないですよんぼくちんは。

「うわ、四季くんを見下ろすって何か新鮮だなあ」

思わず洩れたぼくの言葉に四季くんは隠すことなく舌打ちを一つ。ぷい、ってぼくから視線外してオマケにもう一回舌打ち。ねえねえ怒ってるのーなんて、見た通りそのままだっていうのにわざわざ聞く辺りぼくは相当うざったいのでは、ともう一人の自分が言ってる。でもそんなこと言ってもぼくは四季くんのほっぺを人差し指でぷにぷにするばかり。あ、眉間に皺はっけーん。

「退け嶺二、退かないと」
「退かないと、なあに?」

我ながら腹立つだろうなあって満面の笑みで聞いてみたんだけどね。


形勢逆転


(退かなきゃちゅーするぞ)
(ぺろって下唇舐められながらの言葉)
(四季くんのばか、もうしてるじゃん)
‐End‐
20120903.