- ナノ -

刺激

なにどうした、と聞かれたところでそれを一番聞きたいのは俺自身なわけで。どうしたもなにも、あまりに肩凝りが酷くて書状の一枚も書けなくなった四半刻前。これはもうどうしようもないだろうと気休めに首を回したところ凝りが和らぐといったこともなく。自分で揉めるものならばとっくの昔に試している、絡繰り人形にでもなったかのように身体を部分部分に解体できるものならば俺は自ら進んで肩から下の部分を胴体から外し自身の手で肩を揉み解していることだろう――肩を外せば腕が機能しなくなるというのはこの際置いておいて、だ。

「……初めから誰か呼べよ」

呆れた声音で呟く龍之介は肘で俺の肩を圧すような体勢になると徐々に体重を掛けながら圧迫をする。肘骨による適度な刺激と共に圧迫される肩は気持ちよく、何故初めから龍之介に頭を下げて肩揉みを願いでなかったのかと疑問のみが残る。

「……ん、」

漸く与えられた刺激に鼻からは妙に甘ったれた息が洩れて。それをどうこう思うこともなく、圧される度に素直に吐息を洩らせば何故か龍之介が顔を真っ赤にして睨んできていた、彼曰く俺の吐息が卑猥らしい、知るかそんなこと。


刺激


(泣く、とまではいかないがそれくらいの勢いで龍之介に抱き着き礼を言った)
(奴はまたしても顔を真っ赤にしてたが俺には知らんこっちゃない)
‐End‐
20120902.