- ナノ -

無意識




 とん、と肩を押されて気付けば視線の先には四季と、その後ろに見える天井。いきなり何するんだい、なんて声も出せずにしきりに瞬きを繰り返す。ソファに倒されたと頭では理解するもののその後の行動が全く浮かんでこないわけで。


「寝ろ」


 一言、たったそれだけを低く呟いた奴はそのまま廊下に繋がる扉へと向かう。ちらりと壁にかかった時計を見れば短針は天辺を少し過ぎた辺り、今までの経験上では連れ帰される――ましてや部屋にまで連行されるなんて無かったから頭はそれなりに混乱してる。


「……お前に指図される謂れはないよ」

 なんとか口に出したその言葉の返信はこちらを振り返る奴の視線のみ。じ、とひたすらに送られるそれに些か気分が悪くなり視線を逸らせば。


「隅、自覚ないならトイレ行け」

 溜め息がてら返された今夜何度目かの吐息を溢す羽目となった。


無意識


(くしゃり、と撫でられた頭には今は未だ気付かない振り)
‐End‐
20120823.