- ナノ -

日常

※SSL
当たり前にあるはずの日常が突然なくなる恐怖とはなんだろう。そんな僕らしくもないことを考えながら、映ったままのテレビがしきりに流す映像をぼんやりと眺めていた。傍らに広げた懐紙にはこの間近藤さんから貰った金平糖があって。ひとつ、ふたつ、ただ機械的に口に運びながらも思考することを止めないで居れば何故か、不意に当時のことを思い出して。それまでは毎日が同じ日常の繰り返し、それを苦痛だなんて思うことは有り得なくて。自覚こそなかったけれど、無くなってから初めて分かる大切だった、といった感情を抱いたことが僕にもあったんだ、と。忘れていた記憶をふと思い出した瞬間に電話を掛けずには居られなかった。

「もしもし、ねえ四季君、いつもありがと」

突然の言葉に文句を言うこともなくて。こういう時に妙に頭が回る四季君は一言、俺の方こそありがとう、と。静かに返されたそれにじんわりと胸が熱くなったことが少し悔しかったけれど。当たり前の日常の大切さをまた少し、思い出せた気がした。


日常


(総司らしくないな)
(小さく笑い声混じりのそれには何て返そうか)
‐End‐
20120311.