挑発
※SSL
「ねえ、この中だったら何が好き?」
部活終わりの午後七時、もう帰るとこでしょなんて言って職員室に顔を出した総司に連れられてやってきたのは駅前のデパートで。時期が時期だからか目の前のブースはバレンタイン関連の品物で溢れかえっている。
「何が好きかって、お前が女の子に贈る品物だろ。俺が選んじゃまずいんじゃないか」
ここまで口に出せば何故か総司は唇を尖らせて見るからに拗ねてますといった表情を浮かべた。相変わらず鈍感だよね、と。見せ付けるように大袈裟な溜め息と共に言われたそれに首を傾げれば。
「僕が贈る相手は四季さんだから、変な勘違いはしてほしくないんだけど」
ぶっきらぼうに伝えられたその言葉を頭が理解するまで数十秒。つまりは俺宛か、どうにも掠れた声で小さく問い掛ければ返されたのは頷きで。
「どうせなら、好みの品物が良いでしょ。贈る方も、貰う方も」
不適な笑みと、だから早く選んでよ、との言葉に頭がくらりと目眩を催す。たまには可愛いところもあるな、と。十も歳の離れた相手に対して思う辺り自分も相当末期じゃないか、そんな意味を含めて自嘲染みた笑みを浮かべていれば途端に引かれる腕。
「だから、ホワイトデー前には今度は四季さんが僕を連れてきてくれるんだよね?」
既に決定事項とされたそれに、了解の意味を込めて総司の髪を緩く鋤けばさっきまでの態度と打って変わって耳元を染めるものだからこいつは始末に置けない、と小さく吐息した。
挑発
(僕は押す方だから、押されるのには慣れてないの)
(ふい、とそっぽを向かれての言葉に俺の頬は緩むばかり)
‐To be continue‐
男主とバレンタイン(part.2):男主×沖田、一週間前。
設置/20120207〜20120225