- ナノ -

探る

「で、今年は何が欲しいんだ静は」

俺の問いかけにしぱしぱとしきりに瞬きを繰り返す姿に姿に笑いが込み上げてきた。相変わらずこういった行事に関心がないと言うか、単に鈍いとでもとれるその仕草は静らしいなあ、と。

「は、四季…何がって、何がだよ?」

頭にクエスチョンマークを浮かべて首を傾げる静にヒントとして、あと十日後、とだけ返してみれば。

「10日後……給料日前だったよな」

さも当然といった様子で頷く静とは対照的に項垂れる俺の図が出来上がる。違うのか、と顔を覗き込んできた静にお手上げ、とばかりに両手を挙げて降参を示す。

「ふ、相変わらずだな静は。まあ良いよ、なら当日のお楽しみってとこか。抹茶も莓も、ミルクも平気だよな……えーっと、ビターは苦手だっけか」
「ビターって、チョコのだよな」
「ん」

なら苦えからな、と頬を掻く静は未だに気付かないらしく。鈍感もここまでくると可愛らしくなってくるなあと妙な感慨に耽りながらも帰りにハンズに寄るかと計画を立てたバレンタイン十日前。


探る


(友チョコつうか、普段の礼というか)
(まあ気持ちが伝われば良いよなあ、と)
(チョコがずらりと並んだ棚の前で一人口角を上げて呟いた)
‐To be continue‐
男主とバレンタイン(part.1):男主×平和島兄、10日前。
設置/20120204〜20120225