- ナノ -

お返し

予定外の非番が出来て屯所内をうろついていれば庭先で佇む龍の姿を見付けそちらへと向かう。ちなみに何故非番が出来たのかと言うと総司が原因だったりする、どうも土方さんと言い争ったらしく屯所には居たくないだとかで急遽巡察の当番を交代した。とりあえず空いた時間をどうしようかと考えていた矢先に見付けた龍の姿に口元は自然と綻んだのが分かった。

「龍、暇してるなら茶でも飲みに行かないか?」

龍の背後から声をかければ、うわ、だなんて驚いて見せる龍に瞬きを数度。驚かせたなら悪いな、と謝れば気にしなくて良いと緩く首を振られた。

「あー、茶……だったか。いや俺は」
「都合悪いのか?」

これを干さなきゃならなくてな、と。俺の問いに肩を竦めて足元に置いてあった洗濯物が入った籠を顎で指して見せた。あー、それじゃあ仕方ねえよなあと納得の頷きを返してそのうちの数枚を手に取れば。

「な、宮路」
「ほら前、龍に荷物持ちさせちまったから」

お返しだ、と。空いた片方の手でくしゃりと龍の頭を撫でて言えば。悪いだろ、だとかなんとか渋る龍に一つの提案。

「それじゃあ、あれだ。俺が龍とこの後お茶したいからさ、だから俺のために手伝わせてくれよ」

な、と。尤もな理由を述べて手に持った洗濯物の皺をぱん、と伸ばし物干し竿へと掛けていく。俺の言葉に少しの間迷った素振りを見せた龍はこくりと小さく頷くと足元の籠から洗濯物を手に取った。


お返し


(あんた変わってるって言われないか)
(あー、まあ時々)
(……やっぱりな)
(個性だからなこれも)
(あんたらしい、な)
(ふは、ありがとな)
(別、に礼を言われることでもないだろ)
‐End‐
男主と井吹シリーズ│男主+井吹
設置/20110710〜20120204