- ナノ -

照れる

「ん、これ皆に土産」

夕餉前に団子を振る舞うのも如何なものかと考え、皆がそれぞれ食後の休憩をしだしたのを見届けて勝手場にしまっておいた団子を差し出す。俺が立ち上がって勝手場へと向かう際に龍も同じようにして俺の後を着いてきた、ふは、なんか懐かれてるってのが目に見えて嬉しかったり。
そんなこんなで振る舞った団子は飯後だってのに一本残らずそれぞれの腹へと納まるもんだから、相変わらずな奴らだよなあだとかを龍の煎れてくれた茶を啜りながらぼんやりと考えた。

「あ、左之」
「ん、何だよ?」
「ちょいこっち来てみ」

ふと目についた左之をこちらへと引き寄せて昼間に龍へとそうしたように、口端に残った餡を親指で拭い舐め取れば。な、だとか左之にしちゃあ妙に慌てた様子で辺りを見渡すもんだから俺は首を傾げるしかなくて。

「……はあ、男相手にするもんじゃねえだろうがそういうもんは」

呆れた様子で吐息する左之に瞬きを一つ。見れば周りの奴らも、だよなあ、だとか互いに顔を見合わせるもんだからますます意味が分からねえ。

「……あんた、の。その世話焼き癖のことだろ」

不意に聞こえた声に右隣へと視線を向ければ何故か龍が頬を僅かに赤くして俯いてた。

「まあ、四季の良いところなんだろうが、な」

「……あ、あー嫌だったか?」

左之が口端を指差して言ったことで漸く気付いたそれに謝罪の言葉を漏らせば。驚いたが嫌とかそんなんじゃねえよばーか、と頭を軽く小突かれた。その答えに安堵しつつも龍へと再度視線を戻して左之同様に謝れば。

「お、俺は……その、べつ、に」

口をぱくぱくと開閉させながらの言葉に安堵の息が零れる。ふ、と肩の力を抜いた後に目についた龍は口元を掌で覆ってひたすら顔を赤くして俯いていた、なにこいつすげえ可愛いんだけど。


照れる


(あれ、井吹君顔真っ赤だけど大丈夫?)
(な、っ……き、気のせいだろ)
(ふは、んな照れるもんでもなかっただろさっきのは)
(……なっ、て、照れてなんかないっ)
(ま、そういうことにしといてやるよ)
‐End‐
男主と井吹シリーズ│男主+原田+井吹
設置/20110603〜20120204