- ナノ -

出逢い



「ああ、先客が居たのか」

不意に聞こえた声に振り返ればそこに居たのは僕と幾分も変わらないように思える学生服を着た男だった。見ればその学生服はこの近辺では見掛けないデザインの詰襟タイプの物だったから、きっと誰かのお見舞い客なんだろうなと結論付ける。

「ここ、俺のお気に入りの場所なんだよな」

誰に聞かせるでもなく、フェンスに手をかけてそこから見渡せる街並みを見詰めてそう呟く彼は僕に視線を向けると、人当たりの良い笑みを浮かべて同意を求めてきた。

「あんたは、誰かの見舞いなのか」

特に何をすることもせずにただ二人してフェンス越しに広がる景色を見詰めていれば。ふと投げかけられた言葉に一つの疑問。

「その訊き方ってことは、君"も"そうじゃないってことだよね?」

僕の返しに瞬きを数回。それを言うのならあんたも、なんじゃないか。そう言って苦笑を浮かべた彼は、少し体調が悪くてな、と。そう言って背にあった学生鞄の中から内服薬、と書かれた薬袋を取り出して見せた。

「ここじゃ見ない制服だったから、てっきり僕とは違うんじゃないかなって思ってね」

暗に自分も患者だと、そう含めつつ言えば。

「ん、ついこの間越してきたからな。これは元の学校の制服なんで」
「この辺にある高校なら、転校先は薄桜学園かな」
「ああ、来月から通うことになってる。あぁ、あんたはそこの生徒か?」

うん、そうだよ。そう返せば目の前の彼は嬉しそうに頬を緩めて、右手を差し出してきた。

「友達一号ってことで仲良くしてくれりゃ嬉しい。俺は直衛千里だ、あんたの名前を聞いても良いか?」
「直衛君、ね。僕は沖田総司、薄桜学園の二年だよ」



(俺も二年だから、一緒のクラスだと良いな)
(そう言って笑った直衛君)
(これが僕と彼との最初)