わたしパイナップルって大っ嫌い
嫌いだと明確に口にしたつもりもないし、ましてやそれなりに年齢を重ねた上で口にする言葉としては少しばかり強すぎる。
「近衛君って僕のこと嫌いでしょ」
「……さあ?」
明確に出された単語は予想していた通りに胸を抉るし、どちらにせよ此方の考えが相手に伝わっていたのかと実感すればそれすらも悔しく思えてどうにも居た堪れなさの勝った身体は意志とは反して項垂れてみせる。まるで沖田からの視線を避けるかのように。
「隠さなくていいのに。僕も君のこと嫌いだし」
あぁでも。付け加えられた言葉に地面を睨んでいた視線を上げて沖田の顔を見上げるとそこには予想とは異なる表情を浮かべたそいつが居て。綺麗に整った顔は楽しげな笑みを隠そうともせずに俺の瞳を捉えて離さない。
「嫌いだけど好きかな多分」
相反する言葉を何の抵抗もない様子で言ってのける姿に知らずと溜め込んでいた息が大きく音を立てて肺から漏れていく。なんだそれ。どうにも癪で煮え切らない感情はそのままに伸ばした手は払われることなく少し猫毛のそれに絡むのだから、そんな沖田の態度にも妙な苛立ちが募って感情のままにそこを掻き乱してやった。
20210410
(Title by Garnet)
(Title by Garnet)