- ナノ -

果蜜過多の恋

「安室さーん、僕と付き合ってくれませんか!」
「あぁ、構わないよ。どこに行くんだい?」

今日も今日とて渾身の告白は怒涛のスルースキルで躱されているわけで。しれっとフラれるの何度目だっけなぁと頭で考えながらもこの人は別にそんなに鈍くもないだろうなとジト目で観察する。そりゃあ勿論僕が安室さんの仕事中に話しかけていることもスルーの要因の一つとも理解はしながらも客と店員と言う関係上致し方ないことだと言い訳よろしく考え直す。

「あーむーろーさーん」
「近衛さん、他のお客様もいらっしゃるので声のボリュームを少し落としましょうか」

超絶笑顔でのこの言葉。でもその笑顔がとんでもなく綺麗だったので今日も僕は安室さんに溺れっきりだ。全く相手にされていないなんて見ないフリ見ないフリ。


20211031
(Title by Garnet)