I confess to him.



「バニーちゃん、朝飯。」

開いたドアに寄り掛かりながらこんこんとドアを叩いた彼は、不敵な笑みを浮かべていた。振り返ったバーナビーに盆に載せたナポリタンを掲げて見せる。

「ありがとうございます、虎徹さん。」

おう、と返事をした彼は、以前と全く変わらぬ笑みを浮かべていた。



バーナビーと虎徹が出会ったのは、バーナビーが24歳のときであった。虎徹は13歳年上で、9歳になる娘がいた。仕事でパートナーになったはいいが、あまりにルーズでお節介焼きな虎徹に、初めは業を煮やしたものである。潔癖で生真面目なバーナビーに相性が合わず、何度も何度も怒りをぶつけた。それでも虎徹はおおらかな心でバーナビーに接し続けた。徐々にバーナビーの態度が軟化していき、数ヶ月後には呼び方が「おじさん」から「虎徹さん」に変わった。そしてバーナビーはいつしか、虎徹に対して恋慕の情を抱くようになったが、気付いた頃には遅かった。



「虎徹さん。」
「何だ、バニーちゃん。」
「好きです。」

そう言うと、彼は困ったようにいつも笑い、優しいキスをバーナビーの額に送る。そうして、バーナビーの1日が始まるのだ。
シャワーを浴びて彼が用意してくれた洗濯したての白衣に手を通し、今まで着ていた白衣を彼に手渡す。白衣のまま器械をいじることが多いため、汚れはもう落ちない。ところどころ汚れている白衣は、それでも柔軟剤の良い香りがした。朝食の皿は盆に載せれば彼が片付けてくれる。そしてバーナビーはパソコンに向かい、仕事という名のエゴイズムな作業に入るのだ。

「今日はちゃんと寝ろよ。ひどい顔してる。」
「貴方に関わることですからね。無理もしますよ。」

家事も身だしなみも人生も、全て投げ棄てて得るものは何だろうか。満足だろうか。それとも、虚しさだろうか。

「そういえば、バニーちゃん明日誕生日だろ。何が欲しい?」

かちゃかちゃ、バーナビーのキーボードを叩く指が止まる。僅かにずれた眼鏡を指で押し上げ、壁にかけられたカレンダーを見る。明日の日付に付けられた赤い丸は彼が付けたものだ。

「ああ、もうそんなに経ってましたか。年が経つのは早いですね。」
「『虎徹』と同い年になるんだろ。」

無邪気に笑う彼は、日課のために髪を上げ、項にコードを挿した。そんな彼に肯定を返し、そっと溜め息を吐く。もうそんなに経ってしまったのだと。
虎徹が逝ってしまってから、13年が経過していた。



I confess to him.
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