shall we dance?



さぁひとまずの問題は着替えだ。虎徹は目の前の服を見て腕を組んだ。今はトレーニング用のTシャツにストレッチタイプの短パンだから僅かに大きいくらいで良かったのだが、どうにもいつもの服が曲者な気がしてならない。とりあえずシャツを羽織ってみるが、肩幅がどう考えても余っている。そして胸が大きすぎてシャツのボタンが留まらない。次にベストだが勿論ボタンが留まらない。そして最後にスラックス。

「まぁ案の定だな…」

裾は引き摺り、ウエストは余り、ベルトは穴が足りない。にっちもさっちもいかない状況である。

「着替えた?」

ロッカールームの外からネイサンが声を掛けてくるが、虎徹は着替えも出来ない現状を訴える他なかった。


「じゃあ私とカリーナで買ってくるわ。」
「え、いいのか?」

確かにそれが一番良い方法だろうとは分かっているのだが、虎徹は申し訳ない気持ちと同時に嫌な予感を覚えた。

「な、なぁ、」
「じゃあ行ってくるわね!」
「大人しく待っててねおばさん!」

素早い動きで走り去る二人を目で追いながら、どうにかして止めれば良かったと後悔した。

「あとさりげにおばさんて傷付くな…」


ホァンとイワンと共にアイスを食べながら待っていた虎徹は、帰ってきた二人の荷物の多さに愕然とした。ホァンとイワンも驚きのあまりぱちくりと目を見開いている。

「あ、なに、自分たちの分も買ってきたの?」
「そんなわけないでしょ。全部あんたの分。」

重そうにしていた大量のショップ袋を机に置き、ネイサンは機嫌良さそうに言った。カリーナもどこか機嫌良さそうにショップ袋に入っている服を漁っている。

「どんな服を買ってきたんだい?」

トレーニングを一旦止めて寄ってきたキース、バーナビー、アントニオを押し退け、ネイサンは高らかに宣言した。

「今からファッションショーを始めるわよ!」

虎徹の嫌な予感は見事に的中したのである。顔をひきつらせる虎徹を引き摺り、ロッカールームへと向かうネイサンに荷物を持ちながらその後を追うカリーナ。それを見ていた面々は心の中で合掌した。



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