The first love is not fulfilled.



「先生、好きです。」
虎徹は驚いたように金の瞳を見開く。バーナビーはその反応に無表情で応え、眼鏡を押し上げた。

「…バーナビー、その感情はきっと勘違いだ。」

そう笑って、再び小テストの採点を始めた

『普段はバニーちゃん、バニーちゃんって呼ぶくせに、こんな時に名前で呼ぶ、なんて。』


最初の印象は最悪だった。時期外れの転校生だったバーナビー。虎徹はその担任であった。外面だけは良いが、常に孤独を好む彼に虎徹はあれやこれやと世話を焼きたがったのだ。バーナビーは虎徹のお節介が嫌いで堪らなかったが、誰も踏み込んで来なかった領域に踏み込まれ、新鮮さを覚えた。そこからはトントン拍子である。バーナビーの心に入り込むお節介が段々と心地好く感じられるようになり、バーナビーは虎徹に恋心を抱き始めた。甘く苦い恋心はぬるま湯に浸かっているかのように気持ちが良かった。ただ見守るだけでも良かった。それでも、バーナビーは虎徹に話すことを決めたのだ。懸命に振り絞った声は震えていて、我ながらなんと情けないと思った。震えた声が彼に届いて欲しくもあり、届かないで欲しくもあった。伝えたらもう、生温いだけの関係は崩れてしまう。

『彼は、なかったことにした。』

自分が彼の左手で銀色に光る指輪を見なかったふりをしたように。
もう生温い関係にも戻れず、それ以上の関係にもなれない。初恋は叶わぬものである、そんな言葉を思い出しながら、バーナビーは揺れるエメラルドから滴を溢した。



「バニーちゃん、ダメなんだよ。俺はお前が欲しいものを与えられない…」

去っていくバーナビーの背中に、虎徹はぽつりと呟いた。



The first love is not fulfilled.
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