This is my real intention.



JAPANは素晴らしいと、日本被れの小さな先輩は言う。確かに艶々とした黒い髪は聖とはかけ離れた色なのに何処か洗練されているし、年齢とは反比例して若々しく、アジアの神秘と詠われるのも理解できる。何より彼らはとても真面目で人に優しく、親切だ。それは確かだった。仁義というものを心に持っていて、侍や忍者は素晴らしいんだと叫ぶ先輩をちらりと一瞥する。確かに僕らにはない魅力だが、それだけでは僕の心は動かない。それがどうした。僕の意見である。そう言ってしまえばこの先輩は悲しげに口を噤んでこの場を去るに違いない。だから僕は何も言わず、ドリンクを飲み干した。
身近な日本人が彼しか居ないせいか、どうにも日本人素晴らしいと素直には言えないでいる。



僕はその後自宅で日本文化について調べた。決して彼に近付こうと思ったわけではなく、先輩の話で興味を持ったからだ。(あの場は興味がなかっただけ!帰ってから興味を持ったのだ!)けれど侍や忍者はどうしても好きになれなくて、どうせ調べるなら自分が好きなジャンルをと文学について調べた。もしかしたら彼は文学については何も知らないかも知れない。否恐らく知らない。だが別に彼のために調べている訳ではないから構わないのだ。有名なのはRyunosuke Akutagawa、Sousuke Natsume辺りだろうか。僕はネットで購入した本を読み始めた。



「あなたのためなら僕は死んでも良い。」

何の前触れもなく、僕はそう言った。シャンパンを煽りながらそれを聞いていた彼は、ぴんときているのかいないのか、僕を一瞥しただけだった。彼がこの言葉を理解するしないに関わらず、説教を喰うと思っていた僕は面食らってしまった。この反応は予想外だ。聞かなかったことにでもすると言うのか。それとも、大人らしく軽くあしらおうとしているのか。
彼は立ち上がり、ネクタイを緩めながら窓辺へと近づいた。

「ん。」

僕に手招きをするものだから、僕は素直に彼に歩み寄る。彼は大きな満月を見上げて僕に囁いた。

「月が綺麗だな。」

この人は僕をどうしたいのだろうか。彼を勢い良く抱き締めた。



This is my real intention.
補足:「I love you」を翻訳したとき二葉亭四迷は「死んでもいい」、夏目漱石は「月が綺麗ですね」と訳した
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