It falls in love.




「おじさん、ほらしっかり立って。」

うにゃうにゃと何事かを話しながら千鳥足で次の店に向かおうとする彼の肩を抱く。この様子では次の店など行くことは不可能だ。顔を真っ赤にして覚束無い足取りで歩く彼をサポートしながらタクシーに乗る。

「おじさん、家…寝てる…」

この人はこんなに無防備に寝て、僕が狼だったらどうするつもりなのだろう。
彼の自宅は知らないから僕の自宅へと向かうことにした。僕は彼の自宅さえ知らない。


起きないおじさんをお姫様抱っこしながら家のドアを開けるのはなかなか苦労した。愛しい人の世話を甲斐甲斐しく焼くのはとても楽しいが、きっと彼が起きたら素直じゃない口は勝手に文句を言うのだろう。明日は多分朝から喧嘩だ。
ベッドにおじさんを転がし、ふう、と一息吐く。常に被っているハンチング帽をとり、寝苦しいだろうと思いネクタイを外し、ボタンを3つ外してやった。陽に焼けた健康的な肌が露になり、たまらず喉を鳴らす。しまった、目に毒だ。彼なんてベッドに転がしておくだけにすれば良かった。浮いた鎖骨に、僕からすれば細い胸板、じんわりと汗のかいた首筋に張り付く髪。僕は目を奪われてしまい、動けなくなった。徐々に視線を上げる。薄く開かれた唇から覗く赤い舌、思ったより長い睫毛、今は閉じられた金の瞳に、ただ僕だけを映したい欲求にかられる。

どうしよう、止まらない。

唇が触れる直前で、彼の金の瞳が開かれた。



It falls in love.
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