It falls in love.



隣でウイスキーを煽る彼を横目に、僕はジンをゆっくりと口に含んだ。特別酒に弱いわけではないが、ヒーローとして顔を出している僕が外で醜態を晒すわけにはいかない。

「バニーちゃん俺の娘の写真見せたことあったっけ?」
「ないですね。」

酒が入るとこの人はいつも以上に饒舌になるらしく、先程から脈絡のない話を延々と続けている。僕はそれに相槌を打っているだけだが、彼が楽しそうに話をしているのだから構わないのだろう。
スポンサーから渡されている携帯を片手に操作し、優しい笑みを浮かべて携帯を手渡してきた。この表情はどこかで見たことがある、そう感じた。そして子供を見守る父性の顔だと思い出す。

「可愛いだろう。」

この人は本当に父親なのだと、表情を見て改めて思う。金色の瞳が穏やかに細められ、薄い唇の口角が上がり、薄い笑い皺が口の端にできる。まるで母性にも近い父性の表情に、ぐっと情欲を堪える。

「鼻の下伸びてます。気持ち悪い。」
「ひどっ。」

つい思ってもみないことが口をついて出るが、ウイスキーを煽りながら彼は笑った。ちくりとも痛いと思っていないような表情に、彼の心を動かすことは僕にはできないのだと感じて悲しくなる。

「あなたに似なくて可愛いですね。」
「はは、あいつは母親似なんだよ。」

機嫌が良さそうに笑う彼の目元を見て、笑った時の目元がそっくりだと感じる。愛しい人の子供というのは、憎しみの対象とはならず、ただ慈しむような愛しさが込み上げてくる。これも父性に似た感情かもしれない。

「…目元が、目元がそっくりです。」

そうぼそりと言うと、おじさんは少し驚いたように僕を見て、それから照れ臭そうにそうか、と笑った。



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