監視役


風紀委員室に入ると、風紀委員数人と、委員長、あとなぜか風紀委員じゃない遠野くんがいた。

「あれ、なんで遠野くんがいるの!?」
「榎本先輩!」
遠野くんは俺の姿を目に入れると嬉しそうに笑い、駆け寄ってくる。

「それは俺が話す」
委員長は自分のデスクから立ち上がり、俺たちにソファに座るように促した。

「お前も座れ」

風紀委員室の扉の側で立っていた律にそう委員長が呼び掛ける。律はチッと舌打ちをすると、俺の隣に荒々しく腰掛けた。この2人が話しているのを見るのは初めてでなぜか俺が緊張する。

「旧棟で何があったのか報告してくれ」
委員長は俺を真っ直ぐに見た。

「…はい。被害者は1年生の芦名秋太くんで、話を聞いた限りでは加害者は生徒会長の親衛隊員1人と他生徒2人みたいです。俺たちに気づいて逃げられました」
「俺たち、ってことは榎本は1人じゃなかったのか?」
「あ、はい。巡回中に鏡に会って、2人でいました」
「鏡か。あいつ帰ってきてたのか」

委員長は顎に手を当て、何か考えるそぶりをする。委員長も鏡が帰ってきてたこと知らなかったんだ。委員長の隣に座る遠野くんは、落ち着かないようでキョロキョロと視線を彷徨わせている。

「芦名くんの状態は?」
「顔とお腹を何回か殴られたみたいで、保健室に連れて行きました。今は体調が良くないみたいで寝てます」
「…そうか」

芦名くん、大丈夫だろうか。殴られたところが痛くて寝れていないんじゃないか?ああ、犯人が腹立たしい。

「…あ、芦名くんって最近会長と付き合い始めたんですよね」
遠野くんが俺たちを窺うように言う。

…実のところ、俺は芦名くんが最近学園を賑わせている人物だということを全く知らなかった。さらに言うと、俺は生徒会長の顔を知らない。そんなことを言ったら、それでも風紀委員か、と委員長に怒られそうなので口には出せないが。

「…会長って特定の人を作らないことで有名なのに、なんで急に恋人を作ったんでしょう…」
その遠野くんの発言に、俺は違和感を感じた。

「遠野くんってもしかして中等部からここ?」
「えっ」
俺がそう尋ねると、遠野くんは何故かひどく驚いた顔をした。え、何で?

「そう、ですけど…先輩、覚えてないんですか?」
何を?遠野くんと中等部の時に会ったことあったっけ?

「話を戻していいか」
委員長が咳払いをしてそう言うので、俺たちは口を噤む。チラ、と隣の律を見れば退屈そうに大きくあくびをしていた。

「まず、遠野には風紀の協力者として芦名くんの監視を頼むことにした」
「えっ」
びっくりして遠野くんを見れば、俺を見て大きく頷いている。

「俺、芦名くんと同じクラスなんです。榎本先輩に体育祭の時に助けられてから、何か風紀のお手伝いがしたいと思ってて。それで、委員長に俺からお願いしたんです」
「遠野くん…」
遠野くんがそんなことを考えていたなんて。嬉しくて顔が熱くなる。

「でも、監視って芦名くんが嫌がるんじゃ…」
「監視と言っても24時間尾行したりとか、そんな大したものじゃない。芦名くんが危険な目に合いそうになったり嫌がらせを受けているのを見たら風紀に報告する、これが遠野の役割だ」

…なるほど。

「そして、律」
委員長はあくびばっかりしている律を鋭い目つきで見た。

「今日からお前は風紀委員だ」






back 14/33 go


top


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -