小説 | ナノ


▼ V

「かーらうりー! 唐瓜ー!!」
「何だよ、茄子! そんなに大声で叫ばなくても聞こえるっつうの!」
「ねー、今日鬼灯様いないじゃん? 記帳の仕方分かんないから唐瓜に聞こうと思って……て、あれ? お香さんも一緒なの?」

茄子がようやく唐瓜の隣に立つお香に気がついて手を振った。
苦々しい顔をする唐瓜を無視し、「俺も現世行きたいー。お花見したいー」と駄々を捏ねた。
思ったことは何でも口にするのが茄子の特徴だ。

「お前さ……空気を読めとはもう言わないけど、話の流れを急に変えるのは止めろよ」
「だって桜見たくない? 地獄は暑すぎて花咲く以前に木が燃えちゃうからさぁ」
「いや、俺が言いたいのはそうじゃなくて……」
「あっ、天国なら咲いてるか! 仕事終わったら行こーねぇー。ぜってー綺麗だってー」
「あああ、袖を引っ張るな! ガキかお前は!?」

漫才のようなトークをする二人に、お香が思わずクスクスと笑いだした。

「本当に仲がいいのね、二人とも」
「そ、そそそんなことないですよ! こいつとは只の腐れ縁ってやつで!」
「お香さんは桜好き? 天国の桜綺麗だよね。花見デートとかしたことあるのかな」
「ばっ、バカ茄子! お前なんて口きいてんだ!」
「ふふ……。あぁ、でも天国よりも綺麗な桜なら私知ってるわ」

天国より? と二人のシンクロした声に頷き、
「もうどこに咲いてるか分からないし、私も昔すぎてほとんど忘れてしまってるんだけどーーひどく綺麗だった。まるで、人間みたいに」
と、ポツリと呟いた。
一瞬、しん、と静まった空気だったが、それを壊したのはやっぱり茄子だった。

「じゃあ鬼灯様が帰ったらさ、みんなで花見しようよ。現世でも天国でも、どっちでもいいからさぁ」
「……鬼灯様で思い出したけど、お前、記帳がどうたらとか言ってなかったっけ?」

ほら、と茄子の手に握られた書類を指差す。
「あぁ、そうだった」と茄子が頭を掻き、助けてぇ、と唐瓜に抱きついた。
二人のコントを聞きつつ、お香は何か思い出しかけたが、唐瓜の「お香さん、このアホ、手伝ってください!」の助けの声に、すぐにかき消された。


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