「頭、大丈夫か?」
「…失礼な言い方さね」
「うるせー」

天化がナタクの無鉄砲で無差別な攻撃(一応修行)の被害に合ったっつって、額から一筋の血を流しながら訪ねてきた時には正直驚いた。どうせ修行という名のスパルタ指導に懲り懲りして、休んでいたところを襲われたんだと思う。普段見せない間抜けな表情を晒して目の前に座る天化の姿が随分幼く見えた。唾を飲み込み嚥下する喉仏を見ていれば不審に思った天化が小さく小首を傾げる。咬みついてやりたい、と思った。

「何だかんだで俺のトコ来るんだな」
「ナニ、自惚れてんのさ」
「自惚れてねーよ」
「ふーん?」

小さく溜息を吐いて俺のベッドに堂々と寝転ぶ姿は本当に無防備だ(真っ昼間から発情はしないけれども)。傷の治りが早いとは言え、痛みはあるだろう、さっきから頻りに頭を抱える素振りをしては下劣な声を洩らしている。そして、片腕を枕にして此方に視線を向けた奴の一言に開いた口が塞がらない。

「…ま、間違っちゃいない、さ」

その言葉を言った途端に枕に顔を埋めるものだから、余りの愛らしさに言葉も忘れて、露になっている首筋に咬みついた。生温い息が鼓膜を震わした。男と主張する喉仏に舌先を這わすと、ピクと肩を揺らす天化に更なる悪戯心が支配して、自発的に口角を緩ませた。